総評
「ニューノーマルにより場所の制約が緩和されている」「データは21世紀の石油でありビジネスの根幹になっている」この状況の中でキャリアデザインを考えなおす必要があり、今後のキャリアデザインとしての最適解はAIを中心とした人材になること・・というのが著者の主張です。
時代の潮流に沿ったキャリア志向は、そのまま流れに乗ってしまうと10年~20年後くらいに過剰人材となってしまう・・というのが歴史的な流れです。本書にもある通りπ型人材(2つの軸を元に横展開できる人材。T型人材の発展形)といったマルチ人材となっていく事がこれからの時代には求められています。
その軸のうちの一つにAIを入れておくべきであるというのが本書が訴えたい本質ととらえました。
1.ニューノーマルとAIビジネス
コロナが変えた世界=ニューノーマル
場所の制約が大きく緩和され、地方と都市部の情報格差も低くなっています。また、「データは21世紀の石油」と考えるとビジネスで取り扱う対象がすべてインターネット上にあるため、住む場所や働く場所の制限を考慮しなくてもビジネスを回すことが容易になってきています。
特にAIは判断の一部をシステムにさせるソリューションを考えるビジネス。これはキャリアデザインを考える上で重要なファクターとなります。
キャリアデザインのトリレンマ
仕事を選ぶうえですべてを満足したものを選択することは難しく「職種・業界・場所」のうち2つまでは選択できても、もう一つは妥協せざるを得ないというのが旧来の考え方でした。
これからは場所の制約がなくなれば選択肢が「職種・業界・ライフスタイル」に変わっていきます。
場所ではなく個々のライフスタイルが選択できる時代になる・・とても素晴らしい事ですね。
2.AI人材に求められるスキル
ユーザ思考
ユーザー視点で考える思考
①コンテクスト(主目的) ②現状フロー ③依頼内容(実際の対応内容) ④理由(その対応を選んだ理由)
以上をきっちり抑えてユーザーニーズに答えることが大事です(著書の内容を若干修正しています)
プロダクト思考
ビジネスコンセプトを具体化する思考。PRD(Producgt Requirements Documents)=訳:プロダクト要求仕様書 が作れるようになること。アーキテクチャ図(システム設計と内部フローが把握できる資料)などを読み取れるようになることも大事な素養
企業家思考
ビジネスとして形に出来る思考「Epiphany(顕現できる」。ターゲット顧客は明確か、事業化できるかといった経営上必須の考え方ですね。一般的なサラリーマンが一番持ち得てないものです。
プラットフォーム思考
プラットフォームになれるか、既にプラットフォームとなるライバルがあるかという事を把握できる思考。
フリクションレス・アクイジション(Frictionless Acquisition(摩擦なき顧客獲得)をできる環境が出来ればビジネスとしては成功が約束されたようなものですね。ちょっと他の思考と比べると数段上の思考かなと思います。
転換思考
アイデアを流用する思考。最近本当に増えてると感じますが、全く別の用途や分野にあったものを思考転換で大ヒットさせているものって沢山ありますね。事例として画像解析で雑草と作物を区別するAIを活用してピンポイントに除草剤を噴霧するソリューションが紹介されてました。
オートメーション思考
自動化させようとする思考。内部処理系や社内システム部門などに従事されている方は日常から考えている事ではないでしょうか(=私)。システム屋さんから見ると人間が行う作業はシステムに比べると柔軟性が大変高いですが、ミスが発生しやすく属人化されやすくて本人以外が実態を把握しにくいというデメリットがあります。この点を考慮すれば、この思考は育ちやすいです。
3.AI人材になる
図でも紹介していますが、AIは様々な人材により支えられます。
いきなりAI開発のスペシャリストになる!というのではなく、自分の得意な分野とどう組み合わせられるかを考えるのが大事ですね
AIを開発する人材
<データサイエンティスト>
AIの稼働させるためのデータ構造の解析・設計・実装までを一貫して行うリーダ的存在
<データアナリスト>
データ分析のスペシャリスト。分析ノウハウを蓄積してデータサイエンティストとなる人は多い
<エンジニア(インフラ・フロント・アプリ)>
AIが動く環境、ユーザーがアクセスするツールを開発する人たち。(必須人材ですけど、既存システム関連従事者は基本的に当てはまるのでAI人材に入れるのはちょっと微妙かなと個人的には思います)
AIの活用を推進する人材
<AIシナジスト>
AIを使ってシナジー(相乗効果)を生み出す人。主にAIソリューション提供側企業の人材
(ちなみに著者の造語)
<AIビジネスデザイナー>
AIを使ったビジネスを推進する人材。主に利用者企業側窓口責任者
<UIデザイナー、UXデザイナー>
利便性・操作性を考慮したデザインを考える
多くの方がまず最初に目指すことができるのが「AIビジネスデザイナー」であり、この職種は複数スキルを必要とする為、今後多くの人材を必要とする部分であるという事でした。
まとめ~まずは今いる環境でAI人材になることを目指そう~
転職や専門の学校へ行くことがスキル習得の近道ではありますが、AIの活用を考えていない業種・業界はありません。まずは現時点で置かれている状況でAIを活用するにはどうすればいいか、そういった脳のエクササイズを行う事で既存スキルを活かした次の道が見えてくるのではないでしょうか。
ここには概要しか記載しておりません。著書には具体的な事例やキャリアへ進むためのエクササイズも紹介されてますので是非購読してみてください。
<個人的に気になった用語集>
・ドメインナレッジ・・・特定領域の知識
・Phrasee・・・自動コピーライティングツール
・スカウティブル(scoutible)・・・ゲームで応募者の性格診断をする採用支援ツール(今の所英語のみですかね?)
・ガルバナイズ(galvanize)・・データサイエンティスト育成ブートキャンプ(3か月。英語のみ)
・MOOC・・・Massive open online courseの略。オンライン講座の集合体。アメリカでは既に一般化。日本でもJMOOCなど追随する動きがある
・リカレント教育・・リカレントは、「循環する」ことを意味する。学校卒業も勉強する「生涯教育」思想。
(個人的にはこんな言葉言われる前から当たり前にやってる人が成功を掴んでると感じてます)
・FOME分析フレームワーク・・・実現可能性(fasibility)、応用性(Opportunity)、検証可能性(Measurability)、倫理性(Ethics)から実装を判断するフレームワーク
・OMSCS・・・オンライン授業でコンピュータサイエンスの修士号貰える学校。難易度は高いらしい
・ラムダスクール・・・卒業後、年収が一定以上の仕事に就くことができてから授業料支払が発生するという画期的支払方法の学校。面白いソリューションだけどキャッシュフロー管理大変そうですね