バズワードに惑わされるな。近代史から学べ~[逆・タイムマシン経営論 近過去の歴史に学ぶ経営知 楠木 建,杉浦 泰 (著) ] 書評 

総評

バズワードに踊らされる・・というのはITに絡んでると良くある話ですが、それはIT業界というより世の常であるというのはいい勉強になりました。過去のニュースを紐解くと古くは明治の時代から似たような議論が先端技術や市場動向について行われていたんですね。

いつの時代も社会を変える何か(飛び道具)が動き出して、経済は何かの理由で激動していると言われ続けています。
結局は問題の原因を押し付ける先と解決してくれる魔法を探してるだけなんですね、どんな時代も。
昔から流れに任せて判断をしてしまい、大きな痛手を受けた会社は数知れず。
自分もそのような判断をしない為にも、歴史から学ぶことはまだまだたくさんあります。

時代の流れをウォッチすることは非常に大事ですが、そのようなマクロな視点よりミクロな視点で自分の会社の特定・状況を理解・把握した上で舵取りをする事こそが一番大事な事ですね。

1.飛び道具トラップ

サブスク・・・アドビが大成功。それはアドビ製品の特性(市場優位性&高額製品が新規参入を遠ざけていた)に対して最適な解決策がサブスクであっただけ。他企業が製品・企業特性を無視して真似しても上手くわけがありません。

ERP・・・欧米では標準化・シンプル化をした先に容易に人件費削減できる雇用環境(首切り、入替が容易)があったからこそ。終身雇用・解雇規制がある日本でうまく導入が進まないのにはそれなりの理由があります

SIS・・・ヤマト運輸やセブンイレブンは大成功してますが、それも企業戦略としてシステム活用が必要になったからこそ。戦略ないままの模倣が良い効果を生むことはない

システム会社、コンサルティング、マスメディアが「飛び道具」を使って危機感を煽ります。が、彼らは販売している製品・サービスの性質上仕方のない事。問題なのは戦略もなく振り回されている企業たち

2.激動期トラップ

大きな変化が急激に押し寄せてくる!という話は上記「飛び道具(バズワード)」とともに定期的に出てきます。
が、大きく変化する為にはインフラ整備・サービス充実が必要です。この辺は著者が挙げられていた事例よりゲーム機の歴史を調べた方が納得感は高いと個人的に思いました(ゲーム機の歴史はビジネス戦略を検討する上での示唆が多くあり面白い)

3.遠近歪曲トラップ

シリコンバレー礼賛の危険性・・・大成功の裏に数えきれない失敗企業があるという事実。そしてシリコンバレーはアメリカの中でも特異な地域であるという事。それらを意識せず、日本のシステム活用の現状をを嘆くのは間違っている。
人口の増減・・・増えても減っても「経済への一番の懸念」となっている人工問題。増えている時は「食料・住宅問題」が取り上げられ、減りだすと「生産力不足」で嘆いてます。
どんなもの、どんな国、どんな時代にもメリット・デメリットがあるので、正しく理解することが大事ですね。

<個人的に気になった用語集>

・優れたオペレーション(OE:Operational Excellence) を進めることと、戦略的ポジショニング(SP:Strategic Positioning)を混同してはいけない。企業にとって必要なのはbetterではなくdifferent

・考えが浅い人・・・「情報の豊かさは注意の貧困を生む」(ハーバード・サイモン)
          現代は情報過多で試行が追いつかず各事象に対して注意不足になりがち

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