[模倣の経営学-実践プログラム版 著:井上達彦 ] 要約 ~模倣から始め一歩先行く独創を~

模倣の経営学-実践プログラム版 要約


どんなことも模倣から始まり、変形させ、独自の新しいものへと変わっていく。
世界中の成功企業の事例を元に指南されている本書。新たなビジネスという言葉を聞くと「無」から「有」を生み出すことが考える人が多いですが、人類の長い人類の歴史の中で完全に新しいものなどほぼありません。必ず類似する何かが世の中にあり、その結果が出ているはずです。


模倣の基本は「遠い世界の良いお手本と近い世界の反面教師」の組み合わせから学ぶこと。

ちなみに記事タイトルにある「模倣から始め、一歩先行く独創を」は漫画家 桜玉吉さんが喫茶店「シュベール」で見たという標語。20代の頃に聞いたこのフレーズは僕の行動に大きな影響を与えてくれました。(ちなみに喫茶シュベールは2019年に閉店されたそうです。誠に残念)

基本

「模倣する」といっても、良いお手本をそのまま真似するのではなく本質を理解して、具体化して、エッセンスを模倣していく必要があります。
世の中にはそのまま真似する「うわべの模倣」により失敗している企業が多数。
模倣による成功を掴むためには「本質を理解」するための考え方を鍛える必要があります。

なぞかけ

「OOとときましてXXと説く。その心は~」でおなじみのなぞかけ。この考え方は二つの要素の共通点を導きだす思考法訓練として有効です。

共通性

様々なビジネスモデルの共通性を整理します。共通性を探ることで本質が見えてきます。
この時、~が当たり前という固定観念から脱却しないと本質が見えてきません。
固定観念からの脱却については「ずるい考え方(著:木村尚義)」が参考になりますので合わせてご参照ください。

分類

共通性が見えてきたら分類分けして複数の企業(事例)を俯瞰してみます。どのように分類するかが個性となって現れる点になります。

手順

上の画像のなかにもまとめてますが、基本的に流れで進めましょう

  1. 現状把握
    自分の現状を分析します(日本人は欠点を見つけるのが得意。しっかり欠点を見つめなおします)
  2. 参照モデル
    現状把握した結果で見えてきた課題を解決してくれそうなモデルを探します
  3. 青写真
    参照モデルを抽象化し、どのように模倣するかを具体的に考えてみます。ここで良い具体案が出なかったら「2」の手順に戻りモデルを見直しましょう。良いモデルがあったからといって固執するのは失敗のもとです。
  4. 行程逆算
    青写真として具体化したモデルと現状の差を整理し、どうすれば理想的なモデルにすることができるか考えます
  5. 実行
    ここまで考えたら行動あるのみ。実行した結果、課題が発生したらこのサイクルを繰り返します。

探索

どの会社(事例)を②参照モデルとするか。ここが一番のキモとなる部分ですね。
どうやって探していくかについて下記の事を意識してみましょう。

観察

「本当の旅の発見は新しい風景をみることではなく、新しい目をもつことにある」(マルセル・プルースト)という良い言葉がありますが、経験・知識を積み上げることで視点が変わってきます。より多くの参照モデルを意識する為にもまずは知見を広げていきましょう。

観察する時のテクニックとして「ブラケティング」という手法があります。見て聞いたものをどう感じたか、特徴は何だと思ったのかという単語と対象を紐づけていく思考法です。複数の会社でブラケティングをしてみることで共通性が見えたり分類分けしやすくなります。

探索

様々な知識を組み合わせて新しいものを生み出す。この考え方を「知の探索」と言います。反対語として既にある知識を更に深堀する「知の深化」という言葉もあります。企業の中で自社のビジネスを改善・拡大するのは「知の深化」ですが、この考えは既存事業の拡大はできても新しいものは生まれません。
新しいモデルを生み出すには「知の探索」に考えをシフトすることが必須なのです。
サラリーマンは自社の事業を回すことに集中するので、基本的に考え方が「知の深化」。この部分が新しい事業を生み出す経営者との大きな違いになるのでしょうね。

教師

モデルが整理できたら「どう真似るか」を考えます。

  • 外部の良い手本(肯定)
    単純模倣。そのまま真似てみます。
  • 外部の悪い手本(否定)
    反面教師。悪い事例として認識します。また真逆ならどうなるかを考えてみましょう
  • 内部の良い手本(肯定)
    横展開。複数事業あるなら良いエッセンスを展開していきましょう
  • 内部の悪い手本(否定)
    自己否定。外部・内部の良い手本を元に改善を考えましょう。

分析

自社を把握し参照モデルが揃ったら、実行に向けて更に具体化を進めます。

設計

P-VAR を整理して明確にします。

  • Position・・競合他社の中での自社のポジション、対象となる顧客セグメント
  • Value・・・顧客に対してできる価値提案は何か。顧客の何を満足させ、何を解決するか
  • Activity・・鍵となる行動はなにか。成長エンジン・収益エンジンとなるモデルはなにか
  • Resource・鍵となる経営資源。顧客との関係性や取引先とのパートナーシップなど

整理できたら課金、マネタイズの仕組もあわせて考えましょう

推論

P-VARで設計したモデルと対象の市場(もしくは類似する市場)で既に活躍している企業の参照モデルを比較します。
一致法(比較した結果の共通となる特徴を調べる)や差異法(結果を比較してその要因となる特徴は何か調べる)で比較チェックを行い、市場投入しても問題ないか推論を導き出します

実験

ここまで自分自身の頭の中で考えてきただけで自分の中での「思考実験」は完了しています。次はこの内容を他社へ説明して意見を求めたり、類似の事例が無いか調べてみます。(これを自然実験と言います)

ここまでで課題が把握できてクリアできたら社会実験を実施します。小規模なモックアップを作成してターゲットとなる顧客セグメントの方にご協力いただき有効性を検証します。社会実験については「SPRINT:最速仕事術」が参考になります

実行

あとは実行し、出てきた課題に対処し、大きな課題は再度この「模倣」サイクルを回して改善を進めます。

禅の教えから能楽・茶道・武道にも展開された「守破離」の流れで少しずつ自分オリジナルにしていきます

  • 守・・・師の教えを忠実に真央る
  • 破・・・教えを破る(自分なりの道を見つける)
  • 離・・・教えから離れる(自分の道へ進む)

古代ギリシアにルーツを持つ考えをドイツの思想家ヘーゲルがまとめた「弁証法」もほぼ同じ内容を説いており、人間社会にとって古来より変わらなぬ有効な思考展開とされています。

※弁証法・・正(テーゼ)と反(アンチテーゼ)より合(ジンテーゼ)を導く

遠い世界のいいお手本と近い世界の反面教師から新しいビジネスが生まれる

新しいものを生み出す時は視野を広く持つことと、実行し改善するサイクルを何度も回す事が何より大事な事ですね

<参考にされていた企業>

どれも具体的で面白い事例でした。ぜひ本書を手に取って読んでみてください。

  • トヨタ・・・スーパーマーケットの販売方式を生産方式へ  書籍:トヨタ生産方式
  • セブンイレブン・・・アメリカのモデルを国内へ持ち込み
  • グーグル・・非リンクから検索エンジンを生成
  • ニトリ・・・閉鎖的な家具売り場の常識を破る
  • ベンツ・・自社は高級車の会社という概念を打ち破る
  • JINS・・・日本の高額なメガネ産業への改革
  • ライアンエア・・・サウスウエストのモデルをヨーロッパで模倣
  • グラミン銀行・・・富裕層のみを対象とする銀行に反して貧困女性層をターゲットにした
  • J&J・・使い捨ての医療器具→コンタクトレンズに応用
  • オークランドアスレチックス・・過去の指標とは全く別の指標を元に選手を獲得
  • クロネコヤマト・・・宅急便網(UPSから着想)
  • スタバ・・イタリアのバリスタを手本にした
  • ドトール・・フランスのカフェを手本にした
  • 任天堂・・・アタリのオープン戦略に対抗
  • SONY・・・オープン戦略
  • ゼロックス・・・初期投資が高額になったので印刷枚数の従量課金を導入
  • キャノン・・・トラブルの多い部品を交換カートリッジ化
  • テンセント・・会社全体の事業戦略を考えた順番で模倣を進める

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